古くは中国、朝鮮に発生した漆器ですが、 日本では縄文時代の遺跡から漆器の存在が明されています。 翻(ひるがえ)って黒江漆器の歴史に遡(さかのぼ)りますと 根来塗の手法が伝来したものではないかと伝えられていますが、 天生13年秀吉の根来攻めによって一旦消滅の憂き目に会う その悲運が幸いして新たな黒江漆器を生む基となったようです。
漆器の制作工程は完全な分業形態で地区全体が一大工場と呈していましたが、 その分業という形態から抜けだして意匠から 全行程を一人で仕上げる工芸家が誕生することになります。
今展の橋爪靖雄氏は先代漆芸家 橋爪義雄氏の長子として黒江で誕生し、黒江で育ち、
正しく黒江漆器の申し子的存在、成るべくして成る環境の中で、 知る人ぞ知る現代黒江漆器を代表する作家として 同地近隣にその名を知られる名匠のゆえん所以と存じます。
地元海南市での個展ははじめての由 これも驚きです。
初出品の新作も含めた50余点の出品、 何卒ご高覧下さいますよう心よりお待ち申し上げます。
●略歴
1935(昭10) 海南市に生まれる。
1958(昭33) 漆芸家 佐治賢使氏に師事。(下地から蒔絵〈まきえ〉、螺鈿〈らでん〉、平文〈ひょうもん〉など技法を習得)
1962(昭37) 日展に初入選。
1980(昭55) 県文化奨励賞受賞。
1984(昭59) 日展工芸部門特選受賞。
1986(昭61) 海南市文化賞受賞。
1992(平4) 文化庁地域文化功労者表彰をうける。
2000(平12) 和歌山県文化功労賞受賞。
2004(平16) 日工会展 文部科学大臣賞受賞。
「菫」
「悠久」
「宙I」「宙II」